ハリコドモ

2023 | Client: 公共とデザイン

ディレクション:
石塚理華(公共とデザイン)
川内真史(公共とデザイン)
冨樫重太(公共とデザイン)

デザイン:
越出つばさ(Tak Studio)
土田恭平(Tak studio)
秋山慶太(ふしぎデザイン)

ハリコドモは、セクシュアルマイノリティの方々や不妊治療に悩む方々と話すなかで生まれた、5種類の鳥の形をした張り子のお守りです。
"産める"という感覚が当たり前ではなくなった現代、犬張子のような”安産のお守り”は、無意識に安産多産が幸せ、自らがお腹を痛めて産むことが幸せ、というステレオタイプを助長するものになってしまっているのではないでしょうか?

また、今まで安産・多産・子宝繁栄のお守りは多く存在しましたが、一方でそれ以外の考え方や悩みは見えないものとされてきたのではないでしょうか。私たちは今までマイノリティとして扱われていた希望や祈りを具現化したお守りを、様々な鳥たちの産み、育てる行動にインスピレーションを得て制作しました。
この作品を通して、鑑賞者が出産や育児の多様性について知り、考えるきっかけになればと思います。

ハリコドモは、一般社団法人公共とデザインが主催した「産まみ(む)めも展」で展示するために、TAK Studioとふしぎデザインが協働して制作しました。

モリフクロウはヨーロッパや西アジアの森林〜市街地に住む小型のフクロウです。ロンドンに暮らしていたあるモリフクロウは自分の産んだ卵が孵化しなかったりと、長年子どもを育てられませんでした。しかし、そのフクロウの巣に2羽の育児放棄されたヒナを預けたところ、自分の子どもではないにも関わらずしっかりと育てあげました。

まるで養子を育てるようなこの行動がモリフクロウの中で一般的なことなのかは不明ですが、このエピソードを元に制作したモリフクロウの張り子には、子どもを持ちたいカップルが子どもを持てますようにという願いが込められています。

ハシビロコウは単独行動を好む大型の鳥です。子育てをするときのみ直径が1メートルに達する巣をつくり協力しますが、食事はお互いテリトリーの端同士で食べるほど干渉しません。

これらのエピソードを参考に制作したハシビロコウの張り子には、夫婦が自身の生活を大事にしながら、マイペースな子育てができるようにと願いが込められています。

ジュウイチは春になると日本にやってきて繁殖する渡り鳥です。彼らは自分で子育てをほとんどせず、オオルリ、コルリなどの鳥に種間托卵を行います。ジュウイチを始めとしたカッコウ目の鳥が托卵するようになった理由ははっきりとは分かっていませんが、体温調節機能が低く、他の種に温めてもらう方が孵化率が高いことが一つの仮説となっているようです。

この習性に着想を得て制作したジュウイチの張り子には、どのような形でも子どもが元気に育ちますようにという願いが込められています。

ペンギンは同性カップルが世界的に確認されている鳥です。
絵本「タンタンタンゴはパパふたり」(原題:and Tango makes three)のモデルとなった米セントラルパーク動物園での同性カップルの抱卵事例や、国内ではすみだ水族館にもオス同士のカップルがいたそうです。

これらの事例を参考に制作したペンギンの張り子には、どのような家族のかたちでも健やかに過ごせますようにという願いが込められています。

エミューはオーストラリアの砂漠に住む背の大きな鳥です。

彼らの繁殖行動はユニークで、人間に例えると一妻多夫、または一夫多妻のように見えると言われます。メスはカップルになったオスと卵を産むとペアを解消し、別のオスとペアを作りにゆきます。オスも複数のメスとペアになりますが、メスが産んだ卵と、そこから生まれる雛の世話はオスが行います。

このことから、エミューの張り子には、男性が子育てをする時間を過ごしやすくなりますようにという願いが込められています。